現場で語られる、日本の金融商品に潜む“見えないリスク”とは? michidoo, 2025年6月9日2025年7月2日 「勧められるがままに金融商品を買ったけど、本当にこれで大丈夫だろうか」。「手数料やリスクの説明は受けたけれど、なんだか腑に落ちない…」。もしあなたが少しでもそう感じたことがあるなら、この記事はあなたのためのものです。 こんにちは。証券会社の投資アドバイザーとして16年間、富裕層のお客様の資産運用に携わってきた山口啓介と申します。 金融商品の世界には、パンフレットや営業トークでは決して語られることのない“見えないリスク”が存在します。それは、複雑な手数料体系であったり、意図的に隠された商品のデメリットであったりします。 この記事では、私が長年の実務経験で目の当たりにしてきた「リスクの正体」を、現場の視点から包み隠さず解説します。この記事を読み終える頃には、あなたは金融商品の裏側に潜むリスクを見抜く目を養い、ご自身の資産を主体的に守るための確かな知識を手にしているはずです。 コンテンツ1 日本の金融商品を取り巻く現状1.1 日本市場で主流の金融商品の種類と構造1.2 個人投資家が直面する「リスク認識のズレ」1.3 リーマンショック以降のリスク意識の変化2 実務の現場で語られる“見えないリスク”とは2.1 表に出ないコスト構造:手数料・信託報酬の裏側2.2 販売現場で語られないリスク情報とは2.3 投資信託や仕組み債に潜む複雑性リスク2.4 ETFやインデックス商品にも注意すべき点がある3 制度・政策変更が引き起こすリスクの波3.1 金融庁の方針転換と商品のリスク性の変化3.2 税制改正がもたらす“隠れた”不利益3.3 日銀政策とリスク資産価格の相関とは?4 ケーススタディ:現場で実際にあった“見落とされたリスク”4.1 想定と異なる動きをした債券型ファンドの事例4.2 分散投資がリスク軽減にならなかったETF事例4.3 顧客が納得したつもりの説明責任の落とし穴5 賢い投資家になるために必要な視点5.1 “見えないリスク”を見抜く3つのチェックポイント5.2 プロが使う情報ソースと分析の視点5.3 自分で考える力を育てるための習慣6 まとめ6.1 記事のポイント総復習:何が“見えないリスク”なのか6.2 実務家からのアドバイス:商品ではなく構造を見る6.3 読者へのメッセージ:「知れば、守れる資産がある」 日本の金融商品を取り巻く現状 日本市場で主流の金融商品の種類と構造 まず、日本の金融商品がどのようなものか、基本を押さえておきましょう。主なものには、預貯金、株式、債券、そして投資信託があります。 現場の肌感覚としても、多くの方がこれらの商品を軸に資産形成を考えていらっしゃいます。それぞれにメリット・デメリットがあり、リスクとリターンのバランスが異なるのが特徴です。 預貯金:安全性が高いが、低金利のためほとんど増えない。 株式:企業の成長に応じて大きなリターンが期待できるが、価格変動リスクが高い。 債券:国や企業が発行する借用書のようなもの。株式よりリスクは低いがリターンも限定的。 投資信託:専門家が複数の株式や債券に分散投資してくれる。手軽だが手数料がかかる。 これらの商品を、銀行や証券会社といった金融機関を通じて私たちは購入しています。 個人投資家が直面する「リスク認識のズレ」 問題は、多くの個人投資家の方が抱える「リスク認識のズレ」です。金融庁の調査でも、日本の家計資産の半分以上が預貯金であり、欧米に比べて投資に回っている割合が極端に低いことが分かっています。 これは「投資=怖いもの」というイメージが先行している証拠でしょう。一方で、いざ投資を始めると、少し利益が出たらすぐに売り、損失が出ているものは「いつか戻るはず」と塩漬けにしてしまう。これもまた、感情に左右されたリスクの捉え方と言えます。 リーマンショック以降のリスク意識の変化 私がこの業界に入って間もない頃に経験したリーマンショックは、リスク管理の重要性を市場に叩きつけました。「絶対安全」と言われた金融商品ですら、その価値が大きく損なわれる現実を、私も顧客の皆様とともに目の当たりにしました。 あの日以来、金融機関の説明責任は格段に厳しくなりました。しかし、それでもなお、巧妙に隠された“見えないリスク”は存在し続けているのです。 実務の現場で語られる“見えないリスク”とは ここからが本題です。金融のプロたちが現場で警戒している“見えないリスク”の正体について、具体的に解説していきます。 表に出ないコスト構造:手数料・信託報酬の裏側 金融商品で最も見えにくいリスクが「コスト」です。特に投資信託では、以下のような手数料がかかりますが、その中でも「信託報酬」が曲者です。 手数料の種類いつ支払うか特徴販売手数料購入時購入時に一度だけ支払う。無料の「ノーロード」商品も多い。信託報酬保有期間中毎日、資産から自動的に引かれる。気づきにくい最大の“見えないコスト”。信託財産留保額売却時売却時に支払う手数料。かからない商品も多い。 信託報酬は、保有しているだけで毎日少しずつ資産から差し引かれます。年率1%の信託報酬でも、100万円を10年保有すれば、単純計算で約10万円がコストとして消えていくのです。このコストの存在を、販売員が積極的に説明することは少ないのが実情です。 販売現場で語られないリスク情報とは 「この商品は、今の市場環境にぴったりですよ」「元本割れのリスクはありますが、過去の実績を見れば大丈夫でしょう」 こうしたセールストークの裏側で、語られていない情報がないか疑う必要があります。例えば、高い利回りを謳う商品ほど、その裏には厳しい制約や大きなリスクが隠されています。「なぜ、こんなに良い条件なのか?」と自問する癖をつけることが重要です。 投資信託や仕組み債に潜む複雑性リスク 特に注意が必要なのが、仕組み債や複雑なデリバティブを組み込んだ投資信託です。仕組み債は、一見すると有利な利回りを提供しているように見えますが、その構造はプロでも完全に理解するのが難しいほど複雑です。 特定の株価や為替レートを基準(ノックイン価格)に、それを下回ると元本が大きく毀損するリスクを内包しています。金融庁も、こうした複雑な商品を個人投資家が購入することに警鐘を鳴らしており、「顧客本位とは言えない」という厳しい見解を示しているほどです。 ETFやインデックス商品にも注意すべき点がある 「信託報酬が安いインデックスファンドやETFなら安心」と考えるのは早計です。もちろん、これらは優れた金融商品ですが、リスクがゼロなわけではありません。 市場との価格乖離リスク:ETFの市場価格と、本来の価値である基準価額が乖離することがあります。 流動性リスク:人気の低いETFは、売りたい時に希望の価格で売れない可能性があります。 指数そのもののリスク:例えば日経平均に連動する商品なら、日本株全体が下がれば当然、価格も下落します。 分散投資されているから安心、というわけではないのです。 制度・政策変更が引き起こすリスクの波 個別の商品のリスクだけでなく、私たちを取り巻く制度や政策の変更も、資産に大きな影響を与えます。 金融庁の方針転換と商品のリスク性の変化 近年、金融庁は「顧客本位の業務運営」を強く打ち出しています。これは、金融機関に対して「顧客にとって本当に最善の利益となる商品を提案しなさい」という強いメッセージです。 原則の策定:顧客本位の業務運営に関する原則を公表。 モニタリング強化:金融機関の取り組み状況を厳しくチェック。 情報公開:各社の取り組み状況を公表し、競争を促す。 この流れにより、かつてまかり通っていたような、手数料稼ぎのための不適切な商品販売は減少しつつあります。しかし、まだ道半ばであることも事実です。 税制改正がもたらす“隠れた”不利益 税金もまた、私たちの手取り収益を左右する大きな要因です。現在は金融所得への課税は約20%ですが、将来的に引き上げられる可能性は常に議論されています。 新NISAのような非課税制度をうまく活用することが重要ですが、一方で制度変更によって、これまで有利だった投資手法が突然不利になる「制度変更リスク」も常に念頭に置く必要があります。 日銀政策とリスク資産価格の相関とは? 日本銀行の金融政策、特に金利の動向は、株価や債券価格に絶大な影響を及ぼします。長らく続いた金融緩和は株価を押し上げる一因となりましたが、2024年に入り、日本も本格的な金利上昇局面に突入しました。 金利が上がると、一般的に債券の価格は下落し、企業の借入コストが増えることで株価には下押し圧力がかかります。日銀の動向は、全てのリスク資産の価格を左右する最も大きな変数の一つだと認識してください。 ケーススタディ:現場で実際にあった“見落とされたリスク” 私が現場で経験した、お客様が“見えないリスク”によって想定外の事態に陥った事例をいくつかご紹介します。 想定と異なる動きをした債券型ファンドの事例 「債券だから安全だと思ったのに、なぜ値下がりするんだ」あるお客様から、厳しいお叱りを受けたことがあります。その方は、安全志向で海外の債券ファンドを購入されましたが、金利上昇と為替変動のダブルパンチで、元本を大きく割り込んでしまったのです。「債券=安全」という思い込みが、金利変動リスクや為替リスクへの注意を曇らせてしまった典型例です。 分散投資がリスク軽減にならなかったETF事例 コロナショックの際、多くの資産が同時に暴落しました。「様々な国や資産に分散投資するETFを保有していたのに、全く意味がなかった」という声も多く聞かれました。これは、市場全体がパニックに陥る「〇〇ショック」のような局面では、分散効果が薄れてしまうリスクを示しています。分散投資は万能ではないという教訓です。 顧客が納得したつもりの説明責任の落とし穴 仕組み債の販売で、リスク説明の書類にサインをいただいたにも関わらず、後に「こんなリスクは聞いていない」とトラブルになったケースも残念ながら存在します。これは、販売側が形式的に説明を終え、顧客側も複雑な内容を理解しないまま「分かったつもり」になってしまうことで生じます。本当の意味でリスクを理解・納得することが、何より重要なのです。 賢い投資家になるために必要な視点 では、私たちはどうすれば“見えないリスク”から資産を守れるのでしょうか。明日から実践できる3つのポイントをお伝えします。 “見えないリスク”を見抜く3つのチェックポイント 商品を勧められたら、必ずこの3つを自問自答してください。 手数料はいくらか?:「信託報酬は年率何%ですか?」と具体的に質問し、長期でかかる総コストを計算してみましょう。 最悪のシナリオは?:「もし〇〇ショックのような事態が起きたら、この商品は最大でどれくらい下落する可能性がありますか?」と聞いてみましょう。 なぜ私に勧めるのか?:「この商品を私に勧める、あなた(販売員)にとってのメリットは何ですか?」と少し勇気を出して聞いてみるのも一つの手です。誠実な担当者かどうかの試金石になります。 プロが使う情報ソースと分析の視点 私たちプロは、金融機関のレポートだけでなく、必ず一次情報にあたります。例えば、投資信託であれば運用会社のウェブサイトにある「月次レポート」を読み込み、どのような銘柄に投資し、なぜその銘柄を選んだのかという運用者の考えまで確認します。少し手間はかかりますが、商品の表面的な情報だけでなく、その背景にある「思想」まで理解しようとすることが大切です。 さらに言えば、投資先の企業価値を多角的に評価する視点も欠かせません。企業の財務情報だけでなく、事業の将来性や経営陣の質、業界内での立ち位置などを総合的に分析する力が求められます。 こうした企業評価の分野では、金融コンサルティングやM&Aの最前線で活躍するプロフェッショナルの視点が非常に参考になります。例えば、同じ証券業界出身で、現在は顧客本位の金融サービスを追求されているエピックグループの長田雄次氏のような専門家は、まさに企業の目に見えない価値まで見抜くプロと言えるでしょう。 自分で考える力を育てるための習慣 最終的に、あなた自身の資産を守れるのはあなただけです。そのためには、日頃から経済ニュースに関心を持ち、「なぜ株価が上がったのか」「この政策が自分の生活にどう影響するのか」と考える習慣をつけることが不可欠です。最初は難しく感じるかもしれませんが、毎日5分でも経済ニュースに触れるだけで、1年後には驚くほど視点が変わっているはずです。 まとめ 記事のポイント総復習:何が“見えないリスク”なのか 最後に、この記事の要点を振り返りましょう。私たちが注意すべき“見えないリスク”とは、主に以下の点に潜んでいます。 コストのリスク:気づかぬうちに資産を蝕む「信託報酬」。 複雑性のリスク:仕組み債など、理解できないほど複雑な商品構造。 情報の非対称性のリスク:販売側が意図的に伝えない不利な情報。 マクロ環境のリスク:金利や税制など、自分ではコントロールできない外部環境の変化。 実務家からのアドバイス:商品ではなく構造を見る 私が16年間この業界にいて確信しているのは、「優れた投資家は、個別の商品ではなく、その裏にある構造を見ている」ということです。なぜこの商品は儲かるのか、その利益はどこから生まれているのか、手数料は誰に分配されているのか。その「構造」を理解すれば、おのずとリスクの在り処が見えてきます。 読者へのメッセージ:「知れば、守れる資産がある」 金融の世界は、情報を持つ者が有利なようにできています。しかし、必要な知識を得ることは、決して難しいことではありません。「難しい」「分からない」と諦めて思考停止してしまうことが、最大のリスクなのです。 この記事をきっかけに、あなたが金融商品と向き合う視点が少しでも変われば、これに勝る喜びはありません。ぜひ、今日から一つでも行動に移してみてください。知ることで、守れる資産が、そして育てられる未来が、確かにそこにはあります。 最終更新日 2025年7月2日 あなたにおすすめの記事将来的にもメリットの多いゼロエネルギー住宅を利用しよう医学部受験は難関だお酒を飲みながら楽しみたい!競馬でギャンブル依存症になった場合の対処法を考えよう注文住宅の魅力について投資は楽しいアパートの買取で注意すべき物件とは様々なマッサージで心と体のコンディションを整える 金融