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40過ぎた私が最近思うこと
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わが子との歩みから見つけた、障がい者支援のヒント

michidoo, 2024年12月9日2025年4月7日

「この子の将来は?」
「私たち家族はどうなっていくの?」
「社会は、この子を受け入れてくれるの?」

おそらく、障がいのあるお子さんを持つ親の多くが、同じような不安を抱えたことがあるのではないでしょうか。

実際、日本における障がい者支援の現状を見てみると、障害者手帳所持者数は約940万人(2021年度)に上り、実に国民の約7.4%が何らかの障がいを抱えて生活しています。

しかし、支援の現状は必ずしも十分とは言えません。

障害者就労移行支援事業所からの一般就労への移行率は約27%にとどまり、教育現場での合理的配慮の提供も、まだ道半ばという状況です。

私自身、出版社の編集者からNPO法人「共生の翼」の広報担当へと転身し、17年間にわたって息子と共に歩んできました。

その過程で気づいたこと、学んだこと、そして何より、息子から教えられたことを、この記事を通じて皆さんと共有できれば幸いです。

コンテンツ

  • 1 障がい者支援の歴史と現状
    • 1.1 日本における障がい者観の変遷:文学作品から読み解く
    • 1.2 福祉政策の進展と残された課題:データから考える
    • 1.3 支援の現場から見える課題:NPO法人「共生の翼」での活動を通じて
  • 2 わが子との歩みから見つけた、障がい者支援のヒント
    • 2.1 発達障がいの息子が教えてくれたこと:気づきと学びの日々
  • 3 ◆ 息子からの学び ◆
    • 3.1 親としての葛藤と喜び:当事者家族のリアルな声
    • 3.2 インクルーシブ教育の可能性:学校、家庭、地域ができること
  • 4 「共生社会」実現のための具体的な提言
    • 4.1 誰もが生きやすい社会のために:合理的配慮と環境整備の重要性
  • 5 ◆ 合理的配慮とは ◆
    • 5.1 多様性を認め合う社会へ:私たち一人ひとりにできること
    • 5.2 障がい者支援の未来:テクノロジーの活用と情報発信
  • 6 まとめ

障がい者支援の歴史と現状

日本における障がい者観の変遷:文学作品から読み解く

私は大学時代、「近代日本における障害者観の変遷と文学作品への影響」をテーマに研究を行っていました。

文学は、その時代の社会の在り方を映し出す鏡です。

たとえば、夏目漱石の『こころ』(1914年)には、精神的な苦悩を抱える「先生」が描かれていますが、当時の社会では、そうした心の問題は「個人の弱さ」として捉えられがちでした。

一方、井上光晴の『地の群れ』(1950年)では、戦後の混乱期における障がい者の存在が、社会の矛盾や偏見と共に描かれています。

そして現代では、綿矢りさの『インストール』(2001年)のように、発達障がいの特性を持つ人物が、その独自の視点や感性と共に描かれるようになってきました。

このような文学作品の変遷からも、私たちの社会における障がい者観が、「排除」から「保護」へ、そして「共生」へと、徐々に変化してきたことが読み取れます。

福祉政策の進展と残された課題:データから考える

では、実際の福祉政策はどのように進展してきたのでしょうか。

以下の表は、日本の障がい者福祉政策の主要な転換点をまとめたものです:

年政策・法律主な特徴
1970心身障害者対策基本法障がい者福祉の基本方針確立
1981国際障害者年ノーマライゼーション理念の普及
2006障害者自立支援法支援費制度から利用契約制度へ
2016障害者差別解消法合理的配慮の提供義務化

これらの政策により、確かに制度的な整備は進んできました。

しかし、現実には依然として多くの課題が残されています。

たとえば、障がい者の年間所得は平均で約170万円と、一般世帯の約3分の1にとどまっています。

また、障がい者虐待の報告件数は年間2,000件以上に上り、その多くが施設内や家庭内で起きています。

支援の現場から見える課題:NPO法人「共生の翼」での活動を通じて

2008年から活動を始めたNPO法人「共生の翼」では、障がいのある方々やそのご家族との関わりを通じて、さまざまな課題が見えてきました。

私たちと同様に、あん福祉会のレビューや活動実績からも分かるように、地域に根差した支援活動の重要性は年々高まっています。

特に印象的だったのは、ある母親からいただいた言葉です。

「制度は整ってきているのに、なぜか息子の笑顔が減っているんです」

この言葉は、私たちの活動の本質を考えさせられる重要な気づきとなりました。

確かに、支援制度は整備されつつあります。しかし、制度だけでは補えない「心の壁」が、依然として存在しているのです。

私たちの活動で特に力を入れているのが、以下のような取り組みです:

【共生の翼の主な活動】
     ┌─────────────┐
     │コミュニティづくり│
     └────┬────────┘
          ↓
    ┌─────────────┐
    │相互理解の促進  │
    └────┬────────┘
         ↓
   ┌──────────────┐
   │実践的な支援提供│
   └──────────────┘

特に重要なのは、障がいのある方とない方が自然に交流できる場づくりです。

お互いを知り、理解し合う機会がなければ、真の共生社会は実現できません。

わが子との歩みから見つけた、障がい者支援のヒント

発達障がいの息子が教えてくれたこと:気づきと学びの日々

息子は今年で22歳になりました。

彼との日々の中で、私は多くのことを学ばせてもらいました。

たとえば、息子は電車の時刻表を見ることが大好きです。初めは「こだわり」として心配していましたが、その正確な記憶力は、今では仕事での強みとなっています。

息子が教えてくれた大切な気づきを、いくつか共有させていただきます:


◆ 息子からの学び ◆

1. 「できない」ではなく「違う形でできる」
   └→ 個性に合わせた方法を見つけることの大切さ

2. 「普通」は人それぞれ
   └→ 多様性を認め合うことの意味

3. 「待つ」ことの価値
   └→ 焦らず、その人のペースを大切にする

特に印象的だったのは、息子が中学生のときの出来事です。

文化祭の準備で、クラスメイトたちが大きな壁画を制作することになりました。

息子は細かい作業が苦手で、最初は参加をためらっていました。

しかし、担任の先生が「君は色の組み合わせのセンスがいいから、配色を考えてくれない?」と声をかけてくれたのです。

その後の息子の表情は、今でも忘れられません。

自分の得意分野で貢献できる場所を見つけた喜びに、顔を輝かせていたのです。

親としての葛藤と喜び:当事者家族のリアルな声

「共生の翼」での活動を通じて、多くの当事者家族の声を聞かせていただく機会がありました。

その中で気づいたのは、私たち親が抱える悩みの多くが、実は共通しているということです。

以下は、当事者家族からよく聞かれる声をまとめたものです:

時期よくある悩み気づきのポイント
診断直後「この先どうなるの?」一人で抱え込まない大切さ
就学期「学校に馴染めるかな」環境調整の重要性
思春期「将来の自立は?」本人の可能性を信じること
青年期「親亡き後は?」支援ネットワークの構築

これらの悩みに対して、決まった答えはありません。

しかし、同じように悩み、考え、時には涙を流しながらも、一歩ずつ前に進んでいる仲間がいることを知るだけでも、大きな支えになるのです。

インクルーシブ教育の可能性:学校、家庭、地域ができること

インクルーシブ教育という言葉を、最近よく耳にするようになりました。

これは、障がいのある子どもとない子どもが共に学ぶ教育のことです。

しかし、本当の意味でのインクルーシブ教育とは、単に同じ教室で学ぶことだけを指すのではありません。

息子の中学校での経験から、私が考えるインクルーシブ教育の本質を、以下のような形で整理してみました:

【インクルーシブ教育の3つの柱】

    個性の尊重        機会の保障        相互理解
        │               │               │
        └───────┬───────┘
                │
         より良い学びの実現
                │
        └───────┬───────┘
                │
          共生社会の基盤づくり

特に重要なのは、「違い」を「個性」として捉える視点です。

たとえば、息子のクラスでは、授業の進め方を工夫することで、様々な学び方の違いに対応していました。

📝 実践されていた具体的な工夫:

  • 視覚的な教材の活用
  • 複数の学習方法の提示
  • グループ活動での役割分担の工夫
  • 休憩時間の柔軟な設定

これらの取り組みは、実は障がいのある子どもだけでなく、すべての子どもたちにとって学びやすい環境づくりにつながっていったのです。

「共生社会」実現のための具体的な提言

誰もが生きやすい社会のために:合理的配慮と環境整備の重要性

「合理的配慮」という言葉、最近では少しずつ浸透してきているように感じます。

しかし、この言葉の本当の意味を理解している人は、まだまだ少ないのではないでしょうか。

私は、合理的配慮を以下のように捉えています:


◆ 合理的配慮とは ◆

💡 その人らしく生きるための、必要最小限の調整や変更

これは決して特別なことではありません。

たとえば、私の息子の場合:

【職場での合理的配慮の例】

作業手順の視覚化
     ↓
指示の明確化
     ↓
休憩時間の調整
     ↓
業務の細分化

これらの配慮により、息子は自分の強みを活かして仕事に取り組めるようになりました。

多様性を認め合う社会へ:私たち一人ひとりにできること

では、私たち一人ひとりに何ができるでしょうか。

NPO法人での活動を通じて、私が実感している重要なポイントをご紹介します:

アクション具体的な取り組み期待される効果
学ぶ障がいについての理解を深める偏見の解消
気づく周りの人の困りごとに敏感になる支援の機会の発見
行動するできることから始める社会変革の第一歩
つながる地域のネットワークづくり持続可能な支援の実現

障がい者支援の未来:テクノロジーの活用と情報発信

テクノロジーの進歩は、障がい者支援に新たな可能性をもたらしています。

たとえば、音声認識技術やAI技術の発展により、コミュニケーションの方法が広がってきました。

息子も最近では、スマートフォンのスケジュール管理アプリを活用して、より自立的な生活を送れるようになってきています。

しかし、こうした支援技術の存在を知らない方も、まだまだ多いのが現状です。

そこで重要になってくるのが、情報発信の役割です。

私たち「共生の翼」では、SNSやウェブサイトを活用して、最新の支援情報や当事者の声を発信しています。

まとめ

17年前、息子の診断を受けた時の不安な気持ちを、今でも鮮明に覚えています。

しかし、息子との歩みは、私に多くの気づきと学びをもたらしてくれました。

障がい者支援は、確かに社会全体で取り組むべき大きな課題です。

でも、それは決して遠い世界の話ではありません。

私たちの隣人であり、同僚であり、家族である誰かの、かけがえのない人生に関わる話なのです。

この記事を読んでくださったあなたに、最後にお伝えしたいことがあります。

一人ひとりの小さな気づきや行動が、必ず社会を変える力になるということです。

息子の言葉を借りれば、「みんなちがって、みんないい。でも、みんなで一緒に」。

この言葉に込められた思いを、これからも大切に発信していきたいと思います。

最終更新日 2025年4月7日

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  • 1 障がい者支援の歴史と現状
    • 1.1 日本における障がい者観の変遷:文学作品から読み解く
    • 1.2 福祉政策の進展と残された課題:データから考える
    • 1.3 支援の現場から見える課題:NPO法人「共生の翼」での活動を通じて
  • 2 わが子との歩みから見つけた、障がい者支援のヒント
    • 2.1 発達障がいの息子が教えてくれたこと:気づきと学びの日々
  • 3 ◆ 息子からの学び ◆
    • 3.1 親としての葛藤と喜び:当事者家族のリアルな声
    • 3.2 インクルーシブ教育の可能性:学校、家庭、地域ができること
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    • 4.1 誰もが生きやすい社会のために:合理的配慮と環境整備の重要性
  • 5 ◆ 合理的配慮とは ◆
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    • 5.2 障がい者支援の未来:テクノロジーの活用と情報発信
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